HOME > 社長室 > 東京京浜ロータリークラブ例会卓話「第17回木村準コンフィデンシャルレポート:もはや、米国は中東を必要としない」

東京京浜ロータリークラブ例会卓話

テーマ 「第17回木村準コンフィデンシャルレポート:
もはや、米国は中東を必要としない」
日時 2013年6月11日
会場 グランドプリンスホテル高輪


TOP-P

 

<1.パラダイムシフト:米国の復活>
 今日の話は、今起きている革命的な事についての話です。世界ががらりと変わるという事が起きています。それはシェール革命です。シェールガス、シェール石油、それに関連したエネルギー革命が起こっているのです。それはアメリカだけではなく、世界的に、そして歴史的に大きな影響を人類に与えると思います。それは戦後アラビア・中東方面で石油が大量に出たことや、IT革命に匹敵するような、世界の歴史を根底から変えていくようなことだと思います。それは世界の経済、政治、外交、軍事すべてに大きな影響を与えていくことでしょう。
 アメリカで今まで起きていた大きな問題は、財政赤字、貿易赤字などの慢性的な経済的問題です。これもシェール革命でどっかへ飛んでゆきます。極言すれば、シェールガスが出てきたという事は、米国で金(Gold)がふんだんに採れるようになった、という事と同じで、米国の経済問題はこれで解決という事になります。経済問題だけではなく、今まで米国が直面してきた様々な大きな問題が、これで決まりになってしまうのです。ここ50年先、下手すると100年くらい、米中関係の展開もこれで決まりになるでしょう。
 そのことが日本にどう影響するのか、どう対応するべきか、という事が我々の課題です。日本だけではなくロシアも大変です。天然ガスが売れなくなりますから。今までとがらりと変わります。北方領土の返還を面積等分で返還してもいいかな、とロシアは言いだしました。世界の物事が180度変わるのです。ロシアの例が一番良い例です。シェール革命で全てが180度変わると思ってください。これを頭の中に入れておかないと国際問題を大きく見誤ります。
 原子力の問題ですが、「孫正義が太陽エネルギーとか言っているが、太陽光パネルで発電ができるのは、たかが知れている」と言われる経営者が多くいます。そして「やっぱり原発は必要だ」と言われます。しかし、シェールガスでその話も大きく変化します。太陽光等のソフトエネルギーに移行する前段階で、シェールガス等の化石燃料で繋ぐエネルギーミックスが可能となります。ただし、シェールガスが普及するまでまだ時間がかかりますので、その間ある程度の原発は必要なのだと思います。
 オバマさんが「我々の足元には100年分のガスが眠っている」と言っていますが、ただ、オバマさんが最初当選した時に、経済政策を出しましたが、彼はどこに金を突っ込んだかといいますと、太陽光発電につぎ込んだのです。正確に言うと今も大きな金を太陽光発電につぎ込んでいます。それはもうまったく何にもならないのです。それで、シェールガスのところには一銭も金を出さなかったのです。オバマ大統領が悪いと言っているわけではなく、そもそも政府が経済政策をやろうとしてもそんなものなのです。
 今日本政府が言っている、3本の矢の金融政策はいいのですが、「経済成長戦略」は役人が考えるでしょう。表向き諮問委員会が作るのでしょうが、そこでどの分野が経済的にうまくいくかなんて、わかりっこないのです。オバマの経済政策もその典型的な例ですが、たまたまラッキーな大統領で米国には足元に100年分の天然ガスが眠っていたのです。シェール技術を開発したのは、政府の金をもらった企業でも、大企業でもありません。ただのベンチャー企業なのです。これが米国の底力といえましょう。

<2.シェール革命>
 このスライドの写真は、アメリカテキサス州のバーネットのシェールガス採掘現場です。 アメリカのあちこちに多数このような採掘現場ができています。これはあまり言われていませんが、シェールオイルも同じように採取されているのです。シェールガスとシェールオイルが世界を揺さぶり始めているのです。安価なエネルギーで米国の製造業は復活し始めた、と言われています。


<シェールガス、オイルとは>
 今までとれている石油やガスは、その下2~3kmにもともとある石油やガスが長い年月をかけて、染み出て上にたまっているものなのです。その2~3km下にある石油やガスは、頁岩(けつがん)という岩石の中に閉じ込められています。一億数千年前の植物の死骸に圧力がかかってできたのが頁岩です。その頁岩の微細な隙間に閉じ込められたガスと油、それをとる技術が今まではなかったのですが、その技術が開発されたのです。深さ2~3km位縦にボーリングして、頁岩の地層に到達すると水平に方向を変えてボーリングを進める、 そのあと、大量の水を高圧で注入し、頁岩に小さな割れ目を形成する。割れ目から出てくるガスや油を回収する。このような技術が可能になったのでシェール革命が起こっているわけです。


<可採埋蔵量の増大>
 シェールガスや油を資源に加えると、人類の利用できる資源量が急増するのです。今までのガスの20倍くらい埋蔵量が増加し、石油では8倍くらい埋蔵量が増加します。これは今わかっている埋蔵量で、ロシアとかはあまり埋蔵量がないと、言われていますが、たぶん調べていないだけで、まだまだ出てくる可能性はあります。今後探査が世界中で進めば、さらに埋蔵量がすごく増大するのです。


<世界のどこに分布しているか?>
 このスライドはシェールガスの埋蔵量の世界分布を示したものです。世界中どこでとれるかというと、中国が一番多いのです。36.1兆m2です。2位がアメリカ、そのほかメキシコとかアルゼンチンとか。北米、南米、がけっこうとれやすくて、中国、オーストラリア、そしてアフリカもとれます。こういう状況です。ただ、ロシアは全然書いてないのですが、実際は相当あると思います。探せばたくさん出てくると思います。中国は一位ですが、中国は水が無いので掘るのにコストがかかります。大量の水を注入しますので、水資源の状況が問題となります。


<シェールガス輸入で燃料コストが下がる>
 今電力会社は原子力発電の穴埋めのため、天然ガスを輸入してガス発電を拡大しています。しかし天然ガス輸入のコストは重く、日本は貿易赤字に転落しました。また電力会社は大変な赤字を出しています。それで電力料金値上げになってしまうのです。今原油価格と普通のガス輸入価格はほとんど同じなのです。それがシェールガスを輸入すると3分の1くらいに価格がダウンします。今米国ではシェールガスは従来天然ガスの7分の1の価格とも言われています。日本の場合は冷凍してタンカーで運ばなければいけないので、割高になりますが、それでも従来天然ガスの3分の1くらいに値段が下がるということです。天然ガスで今どんどん発電所を作っていますが、その方向で問題ないということになります。天然ガスの発電所の開発製造も日本がとても強いので、どんどん発電所を輸出できるというのも嬉しい話です。それ以外にも掘削するパイプとかも日本が強いので、「日本の技術がなければ、シェール革命は進展しない」と言われています。


<変わるエネルギー地政学>
 このスライドは直近の世界の天然ガスの受給状況です。たとえばロシアは天然ガスをヨーロッパに売りたいのですが、ヨーロッパに中東格安ガスが流入し始めたため、売れなくなりました。中国に持って行っても売れず、だからロシアは日本に売りたいのです。それでロシアの北方領土に対する態度が急変したのです。日本に天然ガスを売るために、北方領土を面積等分して返してもいいかな?という話も出てきています。「中東も焦っています」とスライドに書いてあります。米国の天然ガス生産量が上昇すると、米国の天然ガス輸入量が激減します。輸入は中東からの輸入が多かったわけですから、中東は焦ってしまうわけです。米国輸出の当ての外れた中東の天然ガスは欧州に流れこむわけですから、ロシアを困らせるのです。今まで日本は天然ガスを中東カタールとオーストラリアから高い値段で買っていましたが、米国からの安いシェールガスの輸入が近い将来増えてくるはずです。いずれにしろ、近い将来天然ガスは世界的に供給過剰になってしまいます。


<米国はサウジ以上の石油大国になる>
 今までの話はシェールガス、オイルの話でしたが、それだけではないのです。最近通常の油田の大きいのがアメリカで続々見つかっているのです。たとえば大西洋岸デラウェア州からジョージア州の沖合に長さ1000km、幅100kmの広大な油田が発見され、埋蔵量21兆トンと推定されています。メキシコ湾とキューバ沖にも大型油田が発見されています。その結果アメリカでは、「オレ達の国はサウジ以上の石油大国になる」と楽観論が言われだしました。今の話は石油だけの話です、ガスは横に置いての話です。ついでですが石炭も、アメリカは露天掘りの石炭がべらぼうにあります。


<FutureGen計画>
 このスライドは石炭の炭素、二酸化炭素を回収して発電する、クリーンな石炭発電所です。このプロジェクトはかなり前に開始されましたが、いったん止まりました。それがまた再開され、新たに34億ドルの資金が投入されました。ここら辺の技術が発達すれば、石炭も今後クリーンエネルギーとして使える、ということになります。石炭はアメリカには山ほどありますが、中国にも石炭は山ほどあります。二酸化炭素の回収技術ができれば、天然ガスも二酸化炭素を出しますので、ただ石油の3分の1とかですが、物事はさらに前に進んで行きます。
 二酸化炭素の削減の話をもう少ししますと、短期的には、石炭発電と石油発電を天然ガス発電にすれば、相当二酸化炭素の排出を削減できます。米国や中国等の国は石炭発電もかなり行われていますので、これを天然ガスに置き換えるだけでも、相当の二酸化炭素の削減になるはずです。
 長期的には排出二酸化炭素の固形化等の技術が完成すれば、石油や石炭でもクリーンなエネルギーとなります。そうすれば、太陽光発電完成までの時間稼ぎが可能です。太陽光発電のソーラーパネルは今まだ、10%程度の変換効率ですが、時間をかければ、50%は可能です。さらに時間をかければ80%ぐらいまで、あげることはが可能です。そこまでの時間稼ぎをクリーンな化石燃料発電で行えば、理想的なエネルギーシフトになります。

<3.米国経済の復活>
 米国の経済ですが、今非常によくなってきています。失業率は直近ちょっと悪くなりましたが、それは全体的な変化の中でちょっと悪かっただけで、大筋は失業率がどんどん良くなってきています。40の州で失業率の改善が進んでいます。住宅価格も上昇しております。さらに格安エネルギー(シェールガス、シェールオイル)が入ってきますと、企業業績の回復につながってきます。これはエネルギーの問題だけではなく、それを材料とする化学などのコストダウンにつながります。あるいは機械なども含めて、ものづくり国家の再生、これはオバマさんが「製造業への回帰」と言っていますが、それが順調に進みます。現在も中国から製造業が戻ってきています。そういう変化が出てきています。
 それからFRBの金融緩和政策の取りやめのタイミングをどうするか、といういわゆる出口戦略の問題がありますが、まだ当分金融緩和政策は続けると思います。財政赤字、財政の崖っていう問題もまだありますけど、そのうちなくなっていくでしょう。


<米国失業率の推移>
 次のスライドは失業率の変化と新規失業保険の申請件数のグラフです。失業率がどんどん良くなっているのと同時に、失業保険申請件数もほとんどリーマンショックの前くらいまで戻ってきています。リーマンショックの頃の30万件のところまで戻ってきています。非常に雇用状況もよくなっていると思います。

<4.米国のアジア回帰>
 2010年1月12日のクリントン米国務長官はハワイの研究機関イースト・ウェスト・センターで米国のアジア政策について演説しました。「アジア回帰」と呼ばれるアジア重視の政策のこれが最初です。シェール革命が進み、米国の中東石油依存離れとなり、中国の台頭という状況の変化は、新たなアジア回帰(アジアピポット)を生み出そうとしています。
 2012年1月、米国防総省は、「新たな国防戦略指針」を公表した。日本にかかわる部分について見てみると、まず、「米国の経済・安全保障上の利益は、西太平洋・東アジアからインド洋・南アジアにかけての弧における動きと密接に関連している」とし、それに応じて米軍は、「世界規模の安全保障に引き続き貢献しつつも、アジア太平洋地域に重心を移す(we will of necessity rebalance toward the Asia-Pacific region)」と強調しています。


<習近平路線始動>
 習近平が国家主席として中国のトップリーダーになったのですが、彼は就任以来「中国の夢」という言葉を演説や発言に何度も使っています。これは非常に中国人のナショラリズムに訴えかけるやり方なのですが、日本にとっては少し嫌な話かもしれません。権力基盤の弱い習近平は人民のナショナリズムを利用して国家を統合せざるを得ないのでしょう。
 習政権は外交においては、対米関係では、「新型大国関係」という表現を使い始めています。経済的にも、軍事的にも台頭した中国にとっては、今までの米中関係から新たにステップアップした関係を求めているのでしょう。


<習近平訪米>
 今月7日と8日に米中首脳会談で行われました。いろんな事が話されたそうですが、結果はみなさんどういうふうに判断されるでしょうか?オバマさんが頼りないと判断されるのか、まぁそんなところだろうと判断されるのか、どうでしょうか。事前に日本の政府とアメリカ政府は綿密な打ち合わせをして臨んだ会談でしたが、こんな話をしたよ、という、報道官のブリーフィングが行われました。このブリーフィングでは「尖閣の施政権が日本にある」とは言っていません。正確には米国側が首脳会談で「尖閣の施政権が日本にある」と言ったとは、報道官は言っていません。「領土問題に米国は関与しない」ということと、「話し合いで穏便にやってほしい」と言った、とは報道官が言っています。この辺は不満に思う日本人は多いとおもいますが、私は、会談では「施政権が日本にある」ことをオバマははっきりと話している、と推測しています。しかしブリーフィングでそうは言わないのは、中国に対する配慮なのでしょうか。それとも散歩しながらの話だったので、記録がないのでしょうか。
 会談の中のスピーチで習主席は新型大国関係にふれ、「太平洋を挟んだ米中、太平洋は広くて、両国の関係をうまくやるのに十分な広さ」だと話しております。これは簡単に言えば、アメリカと中国がうまく争いにならないように、太平洋を線引きしましょうね、という話なのです。山口組系と非山口組系が対立した時に、末端で抗争は起きるけれども、トップ同士で縄張りの線を引いて、喧嘩しないようにうまくやっていきましょう、という様な話です。多分、「勝手に2国で線引きしやがって」と不快に思う日本人も結構いると思います。


<対立回避、権益拡大>
 このスライドはうまい図だと思います。習近平は不安定な身分なのですが、江沢民派閥と胡錦濤派閥の狭間に入って双方から圧力を受けています。いちおう軍の中堅には習近平勢力があるのですが、軍のトップは掌握してないのです。そして民衆のナショナリズムがあります。軍とナショナリズムに後押しされて、前へ出ようとすると、米国の軍事的バッシングに当たります。また米国のアジアへの回帰と関与の外交とも衝突します。そこで、うまく米国との対立を回避して、自国の権益の拡大を行うかが、習近平の課題です。


<米国の懸念>
 米国の懸念は、中国が東シナ海の覇権を狙っているのではないか、という事です。これはもちろん日本も懸念していることです。フィリピンやベトナムとの摩擦や、最近では琉球諸島も、という話が中国から出ています。中国側から見れば太平洋どこで線引きしますかという話で、少なくとも東シナ海は自分のものでしょう、と思っています。もうちょっと先へ行っても、いわゆる第1列島線まではとりあえずいけるのでは、と思っています。尖閣諸島は第1列島線の内側なのです。だからこれは絶対中国のものだ、と思っています。次に第2列島線がありまして、出来れば次にそこに行きたい、と思っています。そのうち出来ればもうちょっと先へ行きたい、グアムぐらいまではいきたい、と思っています。中国から見れば軒先ですから。日本海も日本列島もそうです。「軒先にあるのだから私のものでしょう」と思っています。わざわざ太平洋乗り越えて沖縄に海兵隊を持ってきて、第7艦隊ももってきている。「米国のほうが不自然だ」と思っているのです。


<接近阻止・領域拒否>
 これは軍事的な話ですが、アメリカが懸念しているのは、勿論日本も懸念していますが、「接近阻止、領域拒否」という戦略をここ5年くらい中国がとっていることです。つまり自分の軒先のところに米軍が来られないようにしちゃおうという戦略です。第1列島線、第2列島線のところに米軍が来られないようにしましょうという軍事戦略です。色々な手を考えて中国は頑張っています。4段階くらいでこれをやろうという事で、特に重要なのは最後の、「弾道ミサイルで空母を含む第7艦隊も攻撃しよう」という戦略です。衛星をいくつか打ち上げ、衛星で位置測定等をやって、動いている空母等に弾道ミサイルをあてるという高度なことを考え始めたのです。そのためにDF-21Dというミサイルを開発しました。スライドは空母にミサイルがぶちあたる写真ですが、多核弾頭ですから実際はもっと上の方で10個くらいの弾頭に分かれて、そのまま10発が空母に当たりますので、空母は沈没してしまいます。外れるのもあるかもしれませんが、10発くらい散弾銃で撃つようなものなので、5発は当たると思います。
 弾道ミサイル以外にも潜水艦とか巡航ミサイルを使って接近阻止を行おうとしています。これらの中国の動きは米国をかなり刺激しています。潜水艦で驚いた事が起こったのは今から7年前くらいです。第7艦隊が東シナ海にいる時、空母の眼前に中国の潜水艦が浮上したのです。これが大変な話になって、どうなっているのだ、という事になりました。眼前ですから、実戦だとしたら、空母は沈没していたわけです。これはスライドの上から3番目にある潜水艦の話ですが、そういうものも含めて中国のこのような試みは、米国をかなり刺激しています。


<第7、第5艦隊統合>
 ある情報筋の方が、昨年米海軍のムロイ予算局長から「第5艦隊と第7艦隊が組織上横須賀に統合される」という話を聞いたそうです。第5艦隊は中東バーレーンに基地を持っているのですが、中東にはもう要らないから統合して、横須賀を基地にするという話です。この組織変更は米海軍としては極めて大胆なもので、アラビア海、ペルシャ湾そしてインド洋の指揮を横須賀に一本化し、 第7艦隊司令官がすべての責任をおうことになります。 これがいわゆるアジアシフト、アジアピポット、あるいはリバランシングという話の実態です。

<5.困っているのは中国>
 尖閣問題で日本人は皆、人民解放軍がいつ上陸するか分からない、非常に怖いと思っています。しかし実際困っているのは中国の方なのです。石原慎太郎が尖閣を購入すると、言ったところから事は始まったわけですが、それから野田総理が国有化する、といいました。「慎太郎にやらせるととんでもない事になるから国有化してなんとかまとめましょう」という話は、外務省同志では話がついていたのですが、中国の上層部の流れでそうはならなかったようです。結果的に国有化のほうが大変だった、という話になります。昨年の9月9日に胡錦濤が野田総理と立ち話をしたときに、胡錦濤は「国有化反対」といったのですが、それはとにかく話だけだから、外務省同士で話しているから大丈夫でしょう、という判断を日本政府はしました。そして11日に国有化の閣議決定をしたわけです。ところが、結果は反日デモ、尖閣の領海侵犯となり、大変な騒ぎになりました。しかしながら、本当は困っているのは中国側なのです。ナショナリズムが思った以上に高揚して、反日デモをやらなきゃしょうがなくなった。領海侵犯もやらないとしょうがなくなったのです。ただし、そのような行為に出ても、中国にとって解決策はありません。尖閣を巡って戦争やっても中国は負けます。軍事で太刀打ちできないのです。負けることは中国が一番よく知っています。中国にとっては、事を起こすには、まだ早すぎるのです。もうちょっと時間がほしい、あと5~10年あれば中国がひょっとしたら日本に勝てるようになるかもしれません。今は負けます。だから今一番困っているのは中国なのです。


<中国指導部の変化>
 中国指導部は尖閣問題に関して、昨年のある時期までは、事態のエスカレーションを自制する指示を出していました。しかし日本の尖閣国有化直後、中国指導部は「包括的な命令」を出しました。「尖閣諸島においては、中国のプレゼンスを示し、領土奪還に向けて躊躇なく行動せよ」というのが包括的命令の中身です。これは軍、海上保安官とかだけではなく、大使館にも出しています。これがアメリカと日本、特にアメリカを刺激しています。人民解放軍の管轄外にも出しています。それから管制レーダーの照射事件というのがありました。そして沖縄も自分のものじゃないの、という事を言い出しました。これでまたアメリカと日本を刺激しているわけです。中国指導部が非常に過剰な反応をしている、というのが実情だと思います。


<野中訪中、尖閣棚上げ発言>
 日中関係が悪化して、これじゃ困るということで野中広務さんが中国へ行って、「棚上げがよいのじゃないの」という話を出しました。しかし日本に戻ってさんざんバッシングされています。これはもともと田中角栄が首相の時の話なのです。日中国交回復の時、尖閣問題について話を切り出したのは田中角栄でした。相手は周恩来首相、「これから尖閣問題の話をしましょう」と角栄が言ったら、周恩来が「その問題は今やるとまずいでしょう、それはやらないでおきましょう」と言いました。これは棚上げと言っても、今その話は横に置きましょうという事で、永久にずっとお互いに主張しませんよ、というのとは違うのです。棚上げしたという話ではなく、日中回復の交渉の中には入れない、ということで、そんな詳しいことは話していない様です。野中さんの言っているのがちょっとおかしい部分もあるのですが、ただし、今の状況から言えばそろそろ日中関係はなんとかしたいというのが、日中両国の思いなのかもしれません。中国は片方では沖縄もとか言っていますが、その片方ではそろそろなんとかしなきゃいけない、と思っている人も結構いるはずです。ただ中国の中のナショナリズムがそう簡単にいかないのだと思います。


<琉球王国は中国の藩属国>
 5月8日付中国共産党機関紙、人民日報は琉球の歴史に言及した論文を掲載した。この論文は明・清期には、琉球は独立国で、中国の藩属国だった、と述べていますが、管官房長官は中国に抗議したことを明らかにしました。昨年尖閣問題が起こったとき、ある方と話した際に「そんなに欲しいなら尖閣あげた方がいいのでは」とその人が言うのです。僕が「戦争したら日本は勝つよ」と言ったら「本当勝ちますか」と言われました。それで私が「尖閣いいよ、あげますと中国に言ったら、次沖縄くださいと言ってきますよ」と言いましたが、その通りになってしまいました。

<6.米国は尖閣で戦う>
 「米国が尖閣で戦うかどうか」という質問に、意外に右の人も左の人も一致してNo! と答えます。右の人は、アメリカは尖閣では戦わない、だから日本は核武装しなければいけないとか、中国がミサイルや核で日本を脅かしてもアメリカは何もしてくれない、とかいうのです。左翼の人も、米中はもう仲が良いのだから、日本がどうなろうとも、米国は何も助けやしない、といいます。はたしてそうでしょうか?


<尖閣防衛の秘密計画>
 ある情報筋からの話ですが、その方が2012年大統領選挙の直前、前国務次官のエリック・イーデルマン博士に会ったそうです。その時博士は、「国防総省には尖閣列島有事の際の緊急計画がすでにある」といったそうです。


<日米共同作戦計画>
 中国の「包括的重要命令」に対応して、自衛隊と米軍は「日米共同作戦計画」の作成に入りました。日本側の担当は統合幕僚監部、作業はレーダー照射事件以後急ピッチで進みました。 3月21日に岩崎茂統合幕僚長と、サミュエル・J・ロックリア太平洋軍司令が会談し、尖閣諸島での有事に対処する共同作戦計画を策定することで合意した、と自衛隊が発表しました。作戦は2つのフェーズに分かれ、それは、事前配置作戦と奪回作戦です。このような作戦計画はいざという時に実行するのももちろん目的ですが、それよりむしろ持つことにより相手に対して抑止効果を持つことも大きな目的です。だから、ある程度公開して、その存在を見せつけているのです。


<米海兵隊伊良部島に配置>
 「尖閣では海兵隊は動かないよ」とよく左翼も右翼も言う人がいますが、それがこの作戦計画では出動することになっています。米海兵隊はこの計画では宮古島の横の伊良部島に配置されるそうです。正確には伊良部島の事実上陸続きになっている小さな島「下地島」に配置されるそうです。ここには「下地島空港」があり、滑走路は3千メートルもあります。また、伊良部島にはフェリーが接岸可能な長山港があり、重要な補給拠点となります。米海兵隊は下地島空港に前線拠点を置いて、オスプレイも配備することを、共同作戦計画の目玉としています。海兵隊配置の目的は尖閣への展開よりも人民解放軍への軍事プレゼンスを見せつけることにあるのですが、別の戦術目的もあるのでは、と思います。
 これはどういう事かと申しますと、宮古島が下手すると中国の海兵隊が上陸する可能性があるのです。空港がありますし、港がありますから。いったん宮古島を占拠して、それから次の段階で尖閣をやろうという、戦術に出る可能性があります。それを防ぐ戦術目標があるのでは、と推測します。
 もう一つ、石垣も中国海兵隊が一旦上陸するという可能性があります。石垣は自衛隊で守らなければいけないのですが、宮古島は海兵隊が守ってくれるということではないでしょうか。


<日中空軍力比較>
 尖閣で戦争となった場合、これは制空権が一番重要なポイントになります。特に使い物になる飛行機が問題で、ポンコツはどうでもいいのです。第四世代戦闘機、自衛隊のF15、F2それから中国空軍のJ10等、それの数が問題です。中国空軍の第四世代機の保有数は565機で、航空自衛隊は298機持っています。この数字を見ると圧倒的に日本が負けそうです。ところが、稼働率というのがあるのです。稼働率って何かというと、戦争が始まると空中に飛んでいられる飛行機の数、割合です。空を飛んでいたら、一定の時間で、戦闘機はメンテナンスしなければいけないのです。これはエンジンの性能によって、どのくらい滞空したらメンテしなければいけないという稼働時間が違うのです。 J10は中国製のエンジン、あるいはロシア製のエンジンです。極めて性能が悪いのです。通常は戦闘に入るとだいたい5割くらいの稼働率です。自衛隊のF15、F2はだいたい稼働率7割くらいいけると思います。中国の戦闘機は2割位だと思います。という事はどういう事ですか。日本機の7掛け、中国機の2掛けした数が、実際戦闘できうる戦闘機の数です。中国対日本は113対209で日本の数が逆転してしまうのです。
 それだけではなく、第四世代機の性能の格差は日本の第四世代機が優勢です。パイロットの熟練度でも圧倒的優位に立っています。それから空中管制機というのがあります、AWACSといいます。上空から敵機、味方機の状況を把握して、的確な指示を味方機に出します。それの数が自衛隊は4機持っていて、中国は2機もっています。数も上で優位ですが、また管制機のレーダーの性能が全然違います。だからなんやかやで空中戦をやれば日本が勝つという事です。これにアメリカの空母が2隻くらい来ますと、1隻あたりだいたい70機くらい持っていますので、140機ですね。F18です。それからアメリカはF16をだいたい100機くらい日本の基地に持っています。沖縄の嘉手納と三沢基地です。さらに最近では嘉手納基地にステレス戦闘機F22が10~20機ほど暫定配備されています。実際は米海軍の空母2隻が尖閣領域に配備すれば、それで中国は手も足もだせません。しかももしアメリカが参加しなくても自衛隊は優位です。そういう意味で、困っているのは中国です。


<ファーストイン>
 いざ尖閣で戦争が起こったとき、ファーストインという話があります。これは最初に尖閣に入るのはどの部隊か、という話です。陸上自衛隊の特殊作戦群、これは習志野にいますが300人ほどの部隊です。これがまず上陸するでしょう。しかしこれは偵察部隊で実際の戦闘はやりません。上陸した、人民解放軍がどういう動きをしているかを偵察するだけが任務です。それが一番先に上陸します。ただし、戦闘部隊として上陸するのは西部方面普通科連隊です。この連隊は山口県が本拠地で、隊員700名で構成されています。おそらくヘリコプターで上陸する強襲作戦を実施します。これがファーストインです。そのあと奪回部隊の主力である師団レベルの部隊を投入する事になります。


<離島奪還訓練>
 西部方面普通科連隊ですが、ファーストインの部隊としてはまだまだ訓練が不足です。それじゃ米海兵隊が特訓してあげよう、ということで、毎年米国で離島奪還訓練を行っています。今年も6月11日~28日にアメリカで訓練をやる予定です。今回の米中首脳会談前に、中国がこれを中止してください、と強烈に言いましたが、日米は中止しません。訓練は予定通り6月11日~28日に行われます。自衛隊のヘリ空母に、海兵隊のオスプレイが着艦する訓練も行われる予定だそうです。しかし、首脳会談の直後にこのような訓練を行う事は習金平政権を大きく刺激することになるでしょう。日米にとっては、同盟関係を見せつけるいいチャンスになるでしょう。

<7.中東を必要としない>
 2012年に米国防総省が発表した「新たな国防戦略指針」では米国がアジア太平洋地域に「必然的にリバランス(重心を移す)」していくことが明らかにされています。この背景には、財政赤字の増大という国内問題と中国の台頭という国際問題があります。オバマ政権は、財政の再建を進めつつ、イラクとアフガニスタンから撤退後の世界において、いかに国際的影響力を確保するかが問われています。アジア太平洋へのリバランスはその回答といえましょう。
 リバランスと似た概念に「オフショアー・バランシング」があります。これはテキサスA&M大学教授クリストファー・レインが発表したものです。教授は日本に対する米国の政策につき、「アメリカは日米安保条約を破棄し、独立した大国として日本は必要とする、いかなる軍事力の獲得をも手助けすべきなのだ」と述べています。中東からアジアに重心を移すことも軍事費の削減も、現状のリバランス政策と大きくはかわらないのですが、同盟国日本への対応が大きく異なるのだと思います。オフショアー・バランシングでは中国に対抗するためのミサイル、核、空母、原子力潜水艦も日本に提供することとなります。供与された軍備を用いた日本が直接中国軍と対峙することにより、軍事バランスを取るということになります。
 それに対して現状の米軍の戦略は「エアーシーバトル(ASB)」とみていいと思います。「エアーシーバトル(ASB)」とは地上部隊の前方展開を最小限として、空海兵力を前方展開し、また長距離を即時に移動する航空兵力や海兵隊により効率的な戦闘を行うものです。
 具体的には、在韓米陸軍の縮小や沖縄海兵隊の移動は地上部隊の前方展開の縮小に相当します。空海兵力の前方展開は、巡航ミサイルを多数搭載した潜水艦の配備や、第7艦隊の強化、海軍特殊部隊の増強がそれに相当します。長距離移動の航空兵力は、グアム配備の爆撃機、ハワイや本土からのステルス爆撃機が相当します。
 このリバランスやオフショアー・バランシングという政策に「シェール革命」はどのような影響を与えるでしょうか?一つの影響は財政問題からの影響です。シェール革命が進めば財政問題は緩和していきます。もう一つの影響は中東での軍事展開の必要性が大きく低下する事です。以上二つの影響から考えると、全体の軍事費の削減をさほど必要とせずに、積極的に中東からアジア太平洋にシフトできることとなり、どちらの政策にとってもシェール革命は有利な影響を与える、ということになります。「財政面から考えてリバランス政策は早晩オフショアー・バランシングに転換せざるを得なくなる」という考えがあります。この面からだけ考えれば、「シェール革命はオフショアー・バランシングに対し不利な影響を与え、リバランス政策に有利な影響を与える」と言えましょう。


<日本はどうする?>
 衰退する米国と台頭する中国、これが、近年の国際関係の基本的構図でした。米国は孤立主義にならざるを得なく、中国は北東アジアのみならず、国際的な影響力を増大し続ける。このような国際情勢の下で、日本の取りうる対応の一つは、米国を頼りとしないで、自国の軍事力(核の所有を含めて)を増強し、中国とのバランスを独力に取る、という対応です。もう一つは、軍事力の増強はほどほどにして、米国との同盟関係を弱めて、中国との外交関係を強化し、中国の脅威を軽減しよう、という対応です。シェール革命の影響で、構図は大きく変化しました。衰退する米国はどうも避けられそうです。しかし、孤立主義はどうでしょうか?中東からの撤退がアジアへのリバランスになれば、幸いですが、その場合でも、軍事的な負担を求める、米国の日本への要求はますます強くなるでしょう。そして、万一、オフショアー・バランシングに米国が舵を切ったら、日本はまったく新たな局面に対面することになります。