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2013年 新春インタビュー 木村社長に聞く




<アベノミクスはうまくいくか?>


経済問題からお聞きします。アベノミクスは賛否両論が湧き出ていますが、社長のお考えはいかがでしょうか?

社長 アベノミクスは短期的には行けるのだと思います。ただ長期的にはそんなにうまくいかないと思っています。ただ、うまくいくかどうかは、海外の経済の動向にも大きく依存しています。アベノミクスは、金融政策、財政政策、成長戦略の三つでできていますが、なんと言っても金融政策が今までにない政策になっています。リフレ政策あるいは調整インフレ政策といわれるものですが、「インフレ目標」という政策を含んでいます。ポイントは「インフレ期待」というキーワードです。期待→インフレ→円安→株高は短期的にはうまくいくと思います。反対論は短期的にも「国際化等の世界経済の変質が従来のメカニズムを狂わせる」と言っています。また長期的には、これは日銀が一番心配していることだそうですが、「国債の暴落」につながる可能性があります。

昨年のインタビューでは、日銀の国債の購入は国債の暴落を歯止めする、という風におっしゃっていましたが?

社長 私の考えは、日銀が巧妙に金融政策を展開すれば国債の暴落を防ぐ事ができる、というものです。しかしリフレ反対論者(調整インフレ反対論者)は逆に国債暴落の可能性が高くなる、と主張しています。私の考えに沿って言えば、うまく政策展開すれば、暴落を防ぎ、まずく展開すれば暴落を助長してしまう、ということだと思います。ただし、新政策(調整インフレ政策)を展開しなくても、国債暴落の可能性があるわけですから。新政策でその傾向を促進するのか、改善するのかという話なのです。ただ言っておきますが、私は経済のプロでも、経済学の素人ですから。あくまでその範囲内のお話ですよ。

新金融政策が国債の暴落につながる、というのをもう少し説明いただけませんか?ハイパーインフレになるというのは、昔から聞いていますが・・・

社長 民主党政権の時、当時政調会長の前原さんが日銀の会合に出席して、積極的な日銀の金融政策を進言しました。その時日銀の委員からの調整インフレ反対論が、この国債暴落論だったそうです。シナリオは、「国債を日銀が買うとなると、またインフレ期待が高まっても、名目金利が上昇して、国債価格は下がる」というものです。「下がり始めると、逃げた者勝ちで、みんな国債売り始める」というシナリオです。

ハイパーインフレよりこちらの方が怖いのですね。

社長 ハイパーインフレよりずっと簡単にきてしまう、というのが調整インフレ反対論者の主張です。

この金融政策の話は昨年も一昨年も新春インタビューでとりあげましたが、ついに現実のものになりましたね。しかも衆議院選挙の争点の第一番となり、自民党は圧勝しました。ところで、昨年も話しましたが調整インフレという政策はケインズ政策とよく似ているとおもうのです。日銀がケチャップを大量に買うというバーナンキ米国FRB議長の話は、政府が公共投資を行う、穴を掘った後穴を埋める、のと変わりはないのではないですか?

社長 政府が穴を掘っても、ケチャップを買ってもこれは財政政策で、これは間違いなくケインズ政策ですが、日銀がやれば確かに財政政策か金融政策かわからなくなりますね。しかし、アベノミクスの場合はたぶん日銀はケチャップを買わずに、金融緩和(たとえば国債の購入)をやりますから、これは金融政策ですね。しかし、何か交錯している感は拭えません。マネタリストは裁量的政策を否定しますから、裁量的かどうかがポイントだと思います。アベノミクスから言えば、一番の矢、金融政策がマネタリズム、二番と三番の矢がケインズ政策ではないですか?
日本でこの政策を大きな声で言っている学者は必ずしもケインジアンではないですね。それでそもそもインフレ目標を言い出した、クルーグマンはどうなのかといえば、本人はケインズ理論を素直に考えたらそうなった、と言っています。ニューケインジアンに分類されるそうです。インフレ目標のもう一人の提唱者のバーナンキFRB議長はシカゴ学派の御大ミルトン・フリードマンの信奉者で、ヘリコプターで札をばらまけといい、ヘリコプター・ベンと呼ばれたそうです。こちらはケインジアンでなくマネタリストといえるのではないですか?

ケインジアンでも、色々ありますね。ニューケインジアン以外にポストケインジアン、ネオケインジアン。

社長 しかもケインズはケインジアンではないのですね。

それは有名な話です。アメリカのケインズ学会で、ケインズのスピーチは「この中に一人だけケインジアンでない人がいる。それはわたしです」というジョークではじめました。

<ポール・クルーグマン>



社長 その辺の話に行く前に、まずクルーグマンの話をやらせてもらいますが、日本ではあまり言われていませんが、ノーベル賞をもらったにしては、クルーグマンは米国では、すこぶる評判がわるいのです。ケインジアンの中でも評判が悪くて、「あれはどうしようもない」という学者が多くいるらしいのです。クルーグマンという学者は、特異な性格の持ち主で、やたらと敵を作るそうです。
大統領候補の時のロムニーのアドバイザーの経済学者が「インフレ目標はいいね」といったら、クルーグマンは「そんなこと俺は十年前からいっている、今頃何を言っているのだ」とけなしました。周囲の人たちは「なんで一緒にやりましょう、とか言えないのか?」と訝しがっていたそうです。また、MITにいたとき上司の学部長の悪口をさんざん新聞のインタビューでしゃべって、MITを首状態になり、スタンフォード大学に移りました。とにかく他人の悪口を言う学者らしいです。

1998年にクルーグマンは「日本の嵌った罠」という本を書きましたね・・この辺の話を伺えますか?

社長 この本でバブル不況後の日本経済をニューケインジアン的モデルで分析して、「流動性の罠」に落ちていると指摘しました。だからタイトルを「日本の嵌った罠、すなわち流動性の罠」とすればよくわかります。日本経済に対する回答は、お金を大量に刷って、インフレ期待を作成するのが、唯一の方法である、と述べています。

まさにアベノミクスを提言したのですね。

社長 「流動性の罠」はもともとケインズ理論なのですが、ただクルーグマンの指摘する「流動性の罠」に対して、「ケインズが一般理論で言っているのとは違うぞ」という意見も出ています。

「流動性の罠」というのを少し説明していただきますか。

社長 金融緩和を行えば、ふつう投資や消費が増加しますが、どんどんやれば、貨幣保有が増えるだけで、投資や消費が増えなくなる、というやつで、有効需要の原理とともにケインズ理論の中核の理論です。オーソドックスな対応策は、イノベーションでの投資回復ですが、インフレ目標でインフレ期待を創出するのが、クルーグマン等のリフレ論者(調整インフレ論者)の考えです。

質問です。インフレ期待を創出するというのは、お札をすることと同じではないのですか?

社長 単にお札を刷っても「流動性の罠」に入っているわけですから、お札はブタ積みされるだけです。中央銀行がインフレになるまで刷り続けるという姿勢を示して、お札をすれば、インフレ期待が創出され、資金が動き出す、というのがクルーグマンの考えです。

クルーグマンが「日本の嵌った罠」を指摘しましたが、後日「日本人には謝らなければいけない」と指摘の間違いを認めた、という話を聞いたことがありますが。

社長 たぶんそれは日銀批判をしたことに対して、謝らなければいけないといったのだと思います。それは決して自説の間違いを認めたわけではなく、米国FRBも日銀と同じように対応を誤っているので、日銀だけを非難するのは悪かったという趣旨のジョークだと思います。

今の日本の物価上昇、円安、株高はインフレ期待が創出された、とみていいのでしょうか?

社長 まだわからないでしょう。単なるアナウンス効果や投機の動きかもしれません。動きが速すぎますから、期待が失望にすぐ変わるという心配があります。ただ私は短期的にはOKだとみています。1年、2年ぐらいは順調に大きな問題は起こらないと思います。その間輸出企業は一息つけます。

先ほどのケインジアンとマネタリストの話に戻っていただきますか?経済学部は出たけどまったく経済学を知らない私でもわかるように説明してください。

社長 田原総一郎にも解るように、頑張ります。マネタリズムとケインズ主義の違いは大恐慌の原因の話がよくわかります。ケインズ主義では有効需要の不足が原因だったと考えますが、マネタリストはFRBの金融引き締め政策が原因だったと考えます。どっちだと思いますか?

需要不足か資金不足かという話ですね。高校の教科書では、ダムとか作って乗り切ったとなっていましたが。

社長 実際はケインズ政策の効果がなかったという説が強いですよ。マネタリズムからいえば、普通の不況なのに。金融引き締めをやって、大恐慌にしてしまった、といいます。ただしケインジアンからいえば、公共事業がまだ足りなかったといいます。

不況の原因を需要不足と考えるか、資金不足と考えるかの違いですね。

社長 対応も、公共投資で需要を作り出すのか、中央銀行がお札を刷って資金を供給するのかと、二つに分かれます。そこでクルーグマンの言っているのはどれでしょうか?

資金供給のようにおもえますが?

社長 資金供給なのですが、ただの資金供給ではないのです。インフレ期待を作って資金を供給するわけですから、インフレ期待がメインなのです。資金供給はパンなのです。メインなしのパンでは、流動性の罠に入り込んでしまいます。そこで、また質問です。インフレ期待がメインで資金供給がパンですが、パンをごはんに変えればどうなるでしょう。つまりインフレ期待(メイン)を作りながら公共投資(ごはん)をやったらどうでしょうか?

それでもいいのでしょうが、クルーグマンはそうはいっていない。

社長 最初はいってなかったのですが、後で財政でもいい、つまり公共投資でもいいと言い出しました。

ケインズのようでもあり、マネタリズムのようでもある。クルーグマンはケインズの延長線と考えバーナンキはマネタリズムの延長線上にあると考えている、ということですか。なんか、メインとパン(ごはん)でうまく丸め込まれましたね。

社長 だから両方の学者がいるのです。双方の延長線上にあると考えるか、まったく新しい経済理論と考えるかは、考え方しだいです。再度いいますが、私の考えは素人考えですよ、なにしろ理工学部卒ですから。

<ジョン・メイナード・ケインズ>


ところで、巷では、「ケインズはホモだった」と、ケインズ批判を社長が言って顰蹙を買ったという噂が流れていますが・・・

社長 「証拠があるのか」といわれました。「ケインズ全集を買って読め!」と言いたかったのですが、そんなの読むような人たちでないので、笑っていました。誤解しないでください。ケインジアンの顰蹙をかったわけではないですよ。ケインズ批判をしたわけでないですよ。そんなレベルの話でないですから。

ケインズ全集の書簡の中に男に宛てたラブレターがありますね。動かぬ証拠ですね。なにかケインズを綺麗な存在にしておきたいということですか?

社長 社会福祉主義者で道徳者的存在、それなのかな???福祉政策、その辺の話はあなたの方が良くしっているのではないですか?むしろ聞きたいですね。

第二次大戦後のベヴァリッジ政策に助言しているのです。 例の「ゆりかごから墓場まで」という英国の社会保障の原点ですね。まあ悪く言えば英国病の原点です。でもこれはケインズの実績の中ではさほどの重さはないとおもいます。日本のケインズ学会の作成したケインズの年表には、社会保障にケインズが関与したことは、なにも書いてありません。

社長 評論家、西部邁が「ケインズ」という本を若いころ書いていますが、これは力作といわれています。西部はこの本のなかで、ケインズを「両義性の人」と評するのです。それはホモだけでなく、いろいろな意味で両義性だというのです。

資本主義と社会主義の両義ですか・・・

社長 それも含めてですね。私は両義性よりも、多義性のマルチ人間ではないかと思っていますが。だから、一面だけ見ると誤解をしてしまいます。

そういえばだいぶ前、西部邁の対談番組がテレビでみましたが、そのときそう言っていましたね「両義性」って・・・

社長 西部邁の対談は佐高信が相手だと思いますが、わたしの友人(元品川区議会議長だった男ですが)に毎回見ていた大ファンがいます。

西部邁がその対談で言っていましたが、「チャタレイ夫人の恋人」を書いたD・H・ロレンスがケンブリッジのケインズの家を訪れた時の話です。ケインズが男と手をつないでパジャマ姿で二階から降りてくるのです。ロレンスは油虫の様な奴とそのとき思ったそうです。

社長 D・H・ロレンスはケインズとその周りにいる人たちをめちゃくちゃ毛嫌いしました。ロレンスは言っています「人間が獣になるのは好きだ・・・しかし虫になるのは・・・、とんでもない」

ケインズの大好きだったのは、高級シャンペンと投機と男

社長 酒と博打と男です。ケインズ自身55才の頃「自分はイモラリスト(背徳者)だった、これからもそうであろう」といっています。ケインズ研究家のR・スキデルスキーの解釈は「ヴィクトリア思潮への反逆児」と解釈しています。結局ケインズは反プロテスタントなのです。大衆の貯蓄よりも消費を称揚しているのですから。おもしろい事に日本のケインジアンは反プロテスタントではなく、反朱子学なのです。日本の道徳は教育勅語も含めて朱子学ですから。この前日本のケインジアンにあうと、「大蔵省も民主党も頭が固く朱子学だ」と言っています。しかし自民党の安部さんも朱子学の様に思えますが・・・いやちがう、彼は陽明学だな。何せ長州だから・・・陽明学とケインズ、何か共通点があるかもしれません。

社長は「朱子学は中国人の考えたものだから、日本人には合わない」といっていますから、ケインジアンとは馬が合うのではないですか?

社長 私はケインジアンほど進歩的じゃないけど、頭の固い政治家や学者を貶す時は馬があいます。

西部邁は対談で、ケインズの思想の根底には哲学者:G・E・ムーアの影響が強いと言っていましたが・・・

社長 哲学者ムーアは結社「ソサエティ」の中心人物で、ケインズは結社に入会し、大きな影響を受けたのでした。ケインズの背徳性や反プロテスタントン性はムーアの影響によるといえるかもしれません。ムーアの思想は一言でいえば、「不確実性倫理」です。確実な倫理のプロテスタントは合わないのです。この辺も私は哲学科卒ではないので、自説にあまり自信はありません、と逃げておきますが・・・

ケインズが古典派経済学に異を唱えるのですが、それだけでなく、「資本主義の精神」にも異を唱えているといえるのでしょうか?

社長 古典派には異を唱えているわけですが、「資本主義の精神」に異を唱えているのかどうかはちょっと違うのではないですか?ケインズ経済学のバックにはムーアの哲学が隠れていると考えた方がいいのではないですか?ついでながら古典派のバックにはプロテスタントの倫理が隠れているのだと私は理解しています。自由放任というのは、教会が間に入っては困るというプロテスタントの考えと似ていませんか?自由放任で見えざる手に任せる、というのは、教会を排除して神と相対する、というのと同じではないですか?

とすると、裏側では、プロテスタント対ムーアという事になりますね。

社長 古典派の頃はプロテスタンティズムと自由放任で資本主義はうまくいきました。ケインズの頃には、それが足枷になってきました。ケインズは足枷をはずしてみました。それで資本主義がうまくいったのです。 もうちょっと簡単にいいますと、「よく働け、働いたら金がもうかる、儲かった金は貯蓄しなさい。教会は金儲けの邪魔をしないでください」これがプロテスタントです。「教会だけでなく、国家も邪魔しないでください、神が全てうまくやります」これが古典派です。ケインズは「神なんていませんよ、国家が関与しなければいけません。そして働いて貯蓄ばかりしてはいけません。遊ばなければ社会に金が回りませんよ」といいました。ついでに「やっぱり国家はあまり関与してはいけません。中央銀行が通貨の供給をうまくやればいいのです」と言うのがマネタリズムです。

なるほどね、「遊ばなければ金が回りませんよ」と言うのがケインズの背徳ですね。
ケインズが背徳じゃなかったら、ケインズ経済学は生まれていなかった。

社長 ケインズは「合成の誤謬」と言っています。不道徳でも、震災で自粛をしないのが正しい事なのです。綺麗事ばかりを言っていると、世界を駄目にするのです。
松岡正剛が「実はケインズが一貫して考えつづけていたのは貨幣や通貨の問題だった。ひょっとしたら貨幣のどこかにホモセクシャルな官能を見いだしたのではないかとさえ、勘ぐりたくなるほどだ」と言っています。背徳でなかったら、貨幣の事など真剣に考えなかったかもしれません。

<楽園追放>


社長の年賀メールにミケランジェロの「原罪と楽園追放」の壁画が貼り付けてありましたが?

社長 毎年干支に関係する芸術作品を貼り付けて、新春の俳句も添えて、年賀メールや年賀状をいただいた方に発信しています。昨年はボストン美術館蔵の「九龍図巻」を添付しました。

「蛇にそそのかされたアダムとイヴがリンゴを食べて、楽園から追放される」というのが聖書の天地創造の物語と理解していますが・・・

社長 旧約聖書「創世記」にでてくる話ですが、リンゴとは書いてないらしい・・・

じゃ何の実でしょうか?

社長 「善悪の知識の実」とかいてありますが、リンゴとは書いてありません。

この聖書の話の意味をどのように考えますか?

社長 年賀メールでは、労働の意味みたいなことをかきましたが、楽園を追放されて現場に立たされたわけですから。私の言う現場主義に通じるところもあると思います。もう一つ重要なことは、羞恥心を持ち始めたことです。いずれも人間の本質を物語でうまく表しています。

突然アダムとイヴに羞恥心が芽生え、イチジクの葉で局部をかくした、というはなしですね。

社長 羞恥心と労働が人間の本質である、と言いたいのでしょうかね?虐待や戦争やテロも、宗教もここが根源かもしれません。

宗教が宗教の根源を説明しているのですか?善悪の知識の木の実と羞恥心の関係がよくわかりませんが?

社長 善悪の知識から羞恥心や様々な人間の性(サガ)が生まれるということですかね? 私の友人の栗本慎一郎は「パンツをはいた猿」という本でベストセラーを獲得しましたが、栗本流にいえば、羞恥心も労働も倒錯セックスつまり、本能の崩れですよね。

栗本流に言えば、道徳も宗教もみんなパンツなんですね!
イチジクの葉がパンツの元ですが、労働も本能の崩れですか?どっちが根元的ですか?

社長 どっちなんでしょうね?「パンツをはいた猿」をもう一度読み返さないと・・・直立歩行も人間の特徴ですが、聖書では、直立歩行は神が元々与えてくれたのですね。

人類学的に言うとどうなんでしょう?

社長 栗本説はわかりませんが、私は聖書通りで、直立歩行が先だと思いますが。 森林のチンパンジーは木にぶら下がっているから、歩行はしていないが直立です。最初はぶら下がりの合間に二三歩歩いてみた。そのうち五歩になり、十歩になっていった。

百歩歩いたら、ジャングルを出てしまった。

社長 それが人類学的楽園追放?しかし追放でなく、自主的に出たということになります。 しかし、自主的に出たのか?出ざるを得なかったのか?

気候変動で森林が後退して、サバンナに取り残された、というのは?

社長 それが今までの定説でした。直立から脳の変化が起こり、興味本位でサバンナに進出したというのはいかがでしょうか?

脳の変化の時、羞恥心を持ってしまった。

社長 森林から広々としたサバンナに出て、開放感がたまらなかった。そして未知の世界に出ていくフロンティア精神が生まれた。

どうも、木村説では「脳の変化」がキーワードのようですね。

社長 脳の変化はなぜ起こったかは、よくわかりません。直立が原因という説もあります。ところでサバンナに出たとき、人間が最初に食べたのは何かわかりますか?

動物を狩りして食べたのでは?

社長 最初は狩りの道具も技術もなかった。実はゴミさらいをやっていました。ごみというよりも食べかすさらいです。肉食獣の食べ残しをハイエナやはげたかが食べ、そのまた食べ残しを人間様がいただきました。

惨めですね!ハイエナや禿げたかの後では、食べ残しもないのでは?

社長 しかし、彼らのたべかすには、栄養豊富な部分が残されていたのです。背骨の髄ですね。背骨の中にあるから、ハイエナも禿げたかも食べることはできない。人間は石で割って髄を取り出しました。

人間が道具を使った最初の出来事ですか?やがて道具を使い狩りをするようになるのですね。この辺はお友達の経済人類学者に教わったことですか?

社長 そうだったかな??だいぶ前の話です。その栗本博士は脳梗塞で車椅子の生活をしていたのですが、突然車を自分で運転して、私の事務所にやってきたのです。「ゴルフもやっています。赤ミミズのおかげですっかり直りました」といっていました。それで、赤ミミズの粉末をいただきましたが、飲んだ後にゲップがでたら、ミミズのにおいがやたらとして、参りました。

<共同体主義とは何か>


「これからの正義の話をしよう」という本やDVDが売れていて、作者はハーバード大学のマイケル・サンデル教授です。彼の思想は共同体主義ときいたのですが、その辺は社長の言う「企業共同体」と関連はありますでしょうか?

社長 米国における共同体主義はコミュニタリアニズムといいますが、多分国家レベルの話が主体だとおもうのですが、じつは最初に聞いたのはひょんなところから私は聞いています。15年前位ですかね。保守の論客、西部邁(また、西部邁がでてきてすみません)と若手の評論家、宮崎哲弥が酒場で喧嘩した時、宮崎哲弥が「私は西部さんとは立場が違う、コミュニタリアニズムが私の立場だ」といった、という噂を誰かから聞いたとき、へーと思って、そのときコミュニタリアニズムを調べた事があります。しかし、私の原点はそこではないですね。種をあかせば、実は原点は「山本七平」なのです。

へーそうですか? 山本書店の店主の・・・いつごろの話でしょうか?

社長 かなり前ですね。山本七平を読んだのは。最近また、読み直してみました。簡単に説明しますと、山本七平の根本は日本教なのです。日本教は決して神道ではありません。日本人の底にある、宗教みたいなものなのです。企業も日本教が支配をしていて、企業の事務所には神棚があり。社長も従業員も共同体意識を強く持っています。日本人にとって仕事は経済行為ではなく、精神的行為なのです。「従って日本の企業は、機能集団と共同体の二重構造になる」というのが山本七平の企業共同体論です。

私は元通産官僚の堺屋太一が原点かと思っていました。

社長 知価共同体の知価は堺屋太一の「知価社会」からもってきていますから、それもあるんですが、機能集団性を知的な機能集団にしたいという意味を付け加えましたが。原点は山本七平の二重構造です。

<現代物理学:ヒッグス粒子以後>


ヒッグス粒子とみられる新粒子発見の発表を終え、喜ぶ研究者ら

山本七平の話ももっと聞きたいのですが、例のヒッグス粒子とやらの話も、新春でしか聞けないので、文系にもわかるよう、わかりやすくお願いします。

社長 やっと私の専門分野に話が回ってきました。張り切ってやりたいと思います。 ヒッグス粒子の話は、巷に解説があふれていますので、それ以後の話をします。ヒッグス粒子(と見られる新粒子)はスイス・ジュネーブ近郊の欧州合同原子核研究機構(CERN)にある世界最強の加速器LHCを用いた実験で発見されました。このLHC実験ではヒッグス以外に「超対称性粒子」の探索が注目されています。また素粒子よりさらに小さい「プレオン」、あるいは「余剰次元」、についても同時並行で探索が進んでいます。超対称性粒子は標準理論の各素粒子に、その対となる同質量の超対称性粒子が存在する、という理論です。「超対称性粒子」というのは暗黒物質の原因になる可能性のあるものなのです。プレオンは素粒子を構成すると仮想される点粒子のことです。

宇宙には暗黒物質と暗黒エネルギーが存在して、その正体は分かっていない・・・

社長 暗黒物質と暗黒エネルギーで宇宙の全エネルギーの96%も締めています。暗黒物質の原因には様々な説があって、超対称性粒子はその中の一つです。一方暗黒エネルギーの原因には「異次元宇宙からエネルギーが流れてくる」という説があります。これが「余剰次元」の探索に関連するのです。なにかSF的な話です。

余剰次元というのは我々の感じる三次元空間以上の次元が存在する、という話ですね。この辺は定説でしょうか?

社長 暗黒エネルギーが異次元からきているという説はひとつの仮説にすぎませんが、異次元があるというのは割と定説に近いとおもいます。ただ、いまだ実証はされていません。

それをLHCの実験で実証しようと・・・

社長 粒子を衝突させると小さい粒子は別の次元に迷い込む可能性があります。それは我々の観測からは、消滅したとみえるわけですから。よく調べればわかります。

復習しますと、LHCの実験で、超対称性粒子と余剰次元の探索は暗黒物質の原因解明に関連するものである。ということですね。ではその暗黒物質の存在は明白なのでしょうか?

社長 1934年にフリッツ・ツビッキーによって暗黒物質が仮定されました。銀河団中の銀河の軌道速度は速すぎて、ばらけなければいけないはずが、何十億年も固まって集合している。ツビッキーは目に見えない物質が存在すると仮定して、暗黒物質と名付けました。2003年になって、宇宙背景放射を観測するWMAP衛星の観測によって、宇宙全体の物質エネルギーのうち、74%が暗黒エネルギー、22%が暗黒物質で、人類が見知ることが出来る物質の大半を占めていると思われる水素やヘリウムは4%ぐらいしかないことが分かりました。

暗黒物質は通常の物質ではないということですね・・・

社長 暗黒物質は原子でできていないということです。

原子でできてないが、存在は明白になった、ということですね。



社長 ついでに暗黒エネルギーの話をしますと、これも存在は明白ですが、何なのかはわかっていません。だから暗黒というのですが。存在の根拠は宇宙の加速度膨張ということです。1998年に宇宙の加速度膨張が発表されるまでは、宇宙は膨張しているのは常識でしたが、加速度膨張しているとは、誰も思いませんでした。カリフォルニア大学のチームとジョンズ・ホプキンス大学のチームが同じ時期に発表し、2011年両チームがノーベル物理学賞を受賞しました。原理的には簡単なことで、遠方の天体の膨張と近くの天体の膨張を観測すれば、遠方は昔の膨張で近くは最近の膨張ですから、それを比較すればいいのです。結果が出て驚いたのは本人たちで、何か間違っているのではと、何度も検証したそうです。

加速度膨張と暗黒エネルギーの関連は?

社長 加速度膨張するには膨大なエネルギーが必要で、観測されている宇宙のエネルギーでは全く足りない。だから、未知の膨大なエネルギーが存在するということです。

プレオンの話も聞きたいところですが、時間切れで、また何かの機会がありましたら、よろしくお願いします。ありがとうございました。