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富山大学特別講演会 産業戦略会議

テーマ 「産業構造大転換時代の勝ち残り企業戦略は何か」
日時 2011年9月22日
会場 名鉄トヤマホテル


 9月22日(木)、富山大学地域連携推進機構主催による特別講演会が富山市の名鉄トヤマホテルで開催され、企業経営者や大学研究者、自治体の関係者ら約130名が参加し「産業構造大転換時代の勝ち残り企業戦略は何か」について討論された。産業構造の転換期において、大学を知の拠点として産学官金が連携することで戦略的に国際競争を勝ち抜き、国内産業の活性化を計っていくことを確認した。
会場全体 パネラー
 東京大学公共政策大学院教授・林 良造氏による基調講演“産業構造の変革とこれからの産業戦略”に引き続いて、大学と富山県内各種業界を代表する企業トップの8名による“これからの産業戦略と技術力強化”をテーマにパネルディスカッションが行われました。
 富山大学産学交流振興会会長であり、富山県の電気電子産業界を代表として弊社の木村社長がパネリストとして出席しました。そのパネルディスカッションの内容をご紹介いたします。
ナビゲーターおよびパネラーの方々は下記の通りです。


●ナビゲーター

北陸経済研究所 専務理事
 川田 文人
富山大学 経済学部教授
 清家 影敏

  ●パネラー

  ㈱日本抵抗器製作所 代表取締役社長
   木村 準
  コマツNTC㈱ 常務執行役員
   杉野 高広
  日医工㈱ 取締役常務執行役員
   赤根 賢治
  YKK AP ㈱開発本部室長
   森本 重久


    北陸電力㈱ 代表取締役社長
     久和 進
    北陸銀行 産業調査部長
     藤田 寛
    富山大学 学長
     遠藤 俊郎
    東京大学 共政策大学院教授
     林 良造


プレゼン最中
 先ず、ナビゲーターの北陸経済研究所 川田専務から
「ものづくりの大きな構造転換の時代に入っており、従来の戦略が通用しない時代に入ってきている。そこで、各産業界代表のパネラーの方々に現状・課題・生き残り戦略をプレゼンテーションして頂きます」
と口火が切られました。

木村社長

 木村社長からは“新たな潮流”と題して「産業の潮流」「科学技術の潮流」「応用技術の潮流」について述べられ、流れを読み,流れに乗ることが一番重要であると力説されました。その内容について、以下ご紹介します。

 16年前の1995年に富山大学で経営者・研究者交流会パネルディスカッションがあり、私もパネラーとして上がりました。その時のテーマは「国際化」でしたが、今は「空洞化」がテーマで世の中は変わったものです。当時、国際化の議論はどうしてアジアに出ていくのかでしたが、私はそれよりも重要なのはグローバルスタンダードいわゆるアメリカ的なやり方をどうやって、どこまで受け入れるか。またIT化の流れを製品のみならず、企業のあり方、国家のあり方、教育のあり方を含めてどう受け入れるか?であると話しました。企業として重要なのは流れがどこでどうなっているのかを見て、今のうちに何をしなければいけないのか。あるいはどのように動き、その流れのどこに、どのように乗っかるのか準備しておくことが企業戦略として非常に重要なことです。
プレゼン1
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さて、「産業の潮流」ですが、アジア地域は工業化から市場化へと進み高度成長いたします。米国欧州は工業化は終わって農業と第3次産業が強くなってきており、米国は加えて金融、医療、IT関連も強い国です。
日本の場合はちょっと事情が違っています。第3次産業は70年は50%弱が09年は70%強に増大しており、その分第2次産業が減少したトレンドとなっています。しかしながら日本の場合は金融関係はダメでIT関係もなかなか難しい。製造業から言えば研究開発型、先端型の非量産型の高度な製造業、あるいはシステムと反対側の素材に研究開発を突っ込んだ量産型に日本の製造業の生き残る道があるのではないでしょうか。
「科学技術の潮流」についてはコア技術が応用技術につながり生活革命・新産業、第3次産業に発展すると言う流れで物事を見ています。昔の代表的コア技術は内燃機関でしたが、最近のコア技術で一番重要なものは半導体IC技術と思っています。これに付随して通信技術とコンピューター技術がどんどん膨らんでくる。そしてTV、パソコン、インターネットが普及し新しい産業が出てきています。この流れをよく掴むことが必要です。その流れの中でどのような位置をもっていくかを考えるべきであります。
プレゼン2
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次に「応用技術の潮流」がどのような所で起こっているか上げてみました。自動車については電気自動車の方向にドラスティックに動いています。それに伴い、今は車の80%を自動車メーカーが開発・製造していますが、それががらっと崩れます。さらに車体は鉄板からカーボンファイバーに変わり金属関係がいらなくなります。
ロボットについては産業用ロボットではなくサービスロボットについて話をします。ホンダの2足歩行ロボットとソニーのアイボの2つがブームのトリガーとなりました。今から9年前の2002年に私がコーディネーターをつとめ「ロボット開発最前線」のシンポジウムを開催しました。パネラーの川田工業社長 川田忠裕氏が人間型ロボット“HRP2”について、産総研主任 柴田崇徳氏が癒し系アザラシ型ロボット“パロ”について発表し、ロボット研究開発の現状や方向性についてディスカッションしました。また2005年にロボットフェスティバルが富山でおこなわれ、2010年に石井知事が癒し系アザラシ型ロボット「パロ」の製造工場を視察に来られるなど富山県は工業用ロボットと共にサービスロボットに力を入れています。
プレゼン3
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サービスロボットの分類と応用例を表に示していますが、これは2年前に作成したもので、現時点でのパロの販売数は1837台で国内1343台、海外494台その内ヨーロッパが229台です。産総研の民間企業との共同開発では随一売れているものと言えましょう。
今後拡大が期待されるサービスロボット市場には自動車関連、電機関連、日本抵抗器をはじめとした部品・デバイス関連、産業機械関連、大和ハウスをはじめとしたサービス産業・建設・住宅関連、知能システムをはじめとしたベンチャー企業など多くの企業が参入してきています。H21年NEDO調査による国内ロボット産業の将来市場予測では産業ロボットの他にサービスロボットのかなりな伸びが期待できて2035年には9.7兆円まで拡大すると予測されています。このような伸びになるかどうかは皆さん方の頑張りように掛かっていると思いますとしてプレゼンテーションを締めくくられました。
木村社長2

その他のパネラーからのプレゼンテーションは下記の通りです。

コマツNTC㈱ 杉野常務
 コマツNTCはトランスファーマシン、半導体製造装置、レーザー加工機、マシニングセンター、研削盤、クランクシャフト加工機の6事業部から成り立っています。その中でトランスファーマシンは自動車産業の中心を狙う戦略です。世界の自動車保有台数は今まで北米・欧州が引っ張ってきましたが、今後は中国・インドが伸びてきます。
一方、パワートレイン別でみるとガソリン車のシェアが落ちて、ハイブリッド自動車や電気自動車のシェアが大きく伸びて自動車産業は大きく変化します。つまりエンジン、車体など自動車のほとんどをメーカーで作ってきたインテグラル型産業からモーター、バッテリー、車体などのメーカーが分業化するモジュール型産業、さらにはマーケティング、企画、サービス、販売までが分業化したネットワーク型産業に変化していく。
工作機械においては日本は1982年から27年間世界一位であったが2010年には中国に抜かれてしまいました。工作機械の製品に占める人件費は30%と高く、中国の賃金は日本.の1/10(2009年)と安く、しかも円高から海外生産をしたいのですが、日本の貿易管理令で高精度なマシニングセンターは中国に技術移転ができず日本での生産しかできません。従って、今までの量からコンパクト・高速などの質への転換をはかって中国に勝つしかなく、開発技術力の更なるアップが必要です。

日医工㈱ 赤根常務
 日医工は2005年からジェネリックス医薬品への特化とM&A戦略で大きく業績拡大してきました。この背景にはジェネリックス医薬品の促進で医療費の削減を目指す日本政府の推進政策があります。ちなみにH20年度の国内医療費総額は34.8兆円でその内約20%強の7.4兆円が医薬品費用です。日本におけるジェネリックス医薬品の数量シェアは2007年度の17%から現在は23%で2012年度政府目標が30%と大きく伸びていますが、世界的に見るとアメリカの72%、カナダの66%、イギリスの65%、ドイツの63%に対して日本は低く、今後は欧米並みになる流れにあります。単価は2年に1度の改定で下げられますが、数量拡大と新製品(先発メーカーの特許切れ品)投入でビジネスモデルが成り立っています。
しかしながら、世界のジェネリックスメーカーが日本に参入してきたり、国内の先発メーカも参入してくるなどプレーヤーが増大してきています。さらに中長期的にはバイオ医薬品が台頭してきて低分子医薬品が減少、そしてバイオ医薬品の特許切れというトレンドとなります。日医工の戦略は海外企業と開発提携やM&Aでバイオ後発品への参入、アジア市場への進出、社内体制の強化をはかることです。

木村社長3

YKK AP 森本室長
 アルミ地金の世界生産量は400万トンで、その需要の牽引役は欧米メジャーですが最近は中国の需要が伸びてきています。日本でのアルミ製品出荷量は車関係が伸びていますが、建設押出製品は1996年を境に住宅着工件数の低下と共に減少してきています。国内建設押出製品における富山県シェアは1970年28%、1988年40%、2009年35%でアルミ王国を築いてきました。その要因は豊富な電力と産学連携による技術力であります。
市場トレンドをウオッチすると、東日本大震災以降において社会の変化に加えて購入者の意識の変化が起こっています。長期的には脱サッシ(リチウム電池・LED反射板・メガソーラ架台などの成長産業分野進出)、アルミサッシから樹脂サッシ、グローバル展開へとビジネスモデルの転換が必要で、産学連携が今以上に重要になってきます。
北陸電力 久和社長
 今夏は原子力の停止を節電のご協力と水力・火力の調整で乗り切りましたが、産業界からも節電は今夏のみにして欲しいとの要望があります。しかも今冬の見通しも立っていません。原子力のストレステストをしっかりとやって安全性をさらに高めて再稼働していきたい。
日本の電力は火力61%、原子力29%、水力8%、新エネ1%です。原子力エネルギーの代替として再生エネルギーやLNG等の火力の拡充が考えられますが、それぞれに大きな課題があります。日本の電力は世界の中で最も高い品質です。また国内のエネルギー価格は1995年を基準にして電気を除いて上がっていますが、電気料金は90%以下に下がっています。またGDP当たりの一次エネルギー総供給量では日本が世界で一番のエネルギー使用効率を達成しています。
しかしながらライフスタイルの変化で民生用、運輸部門のエネルギー消費が増加しますので、省エネルギーへの取り組みを積極的に支援してまいります。今後は原子力の安全・安定運転と再生可能エネルギー導入拡大に取り組み、抵廉・良質な電気を安定に供給する社会的使命を全うしてまいります。
北陸銀行 藤田部長
 北陸銀行は高等教育機関と連携協定の締結および企業との連携で、大学と企業とのビジネスマッチング、大学の研究助成金、大学発ベンチャーへの資本参加など多くの活動を実施しています。
金融機関の役割は縦社会に横串を入れるコーディネーター、目利き力による産学の仲介、資金調達の支援、人材育成支援の4つがあります。北陸銀行は産学官の橋渡し役と北銀のネッットワークをフルに活用した有効なマッチングを実現し地域社会に貢献していきたいと考えています。
富山大学 遠藤学長
 産学官連携として見た場合、富山大学は決してポジティブではなかったと思います。S40年頃までは地域産業界と個別の連携が強かったのですが、S40年頃からの学生運動で産学協同への強い反発があり、S55年頃から大学は研究・論文・の業績志向に陥りました。これではまずいと気づき産学官連携の機運が盛り上がったのはH10年頃以降です。今後は富山大学地域連携推進機構が中心になって大学の教育や研究資源の情報を集めて共有化し、大学がハブ機能となって産学官金連携を押し進めていきたいと思います。

客席