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2010年 新春インタビュー 木村社長に聞く 「新たな潮流をつかむ」



<マネーの潮流>
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一昨年から昨年に起こった、いわゆる「百年に一度の危機」を今の時点でどのように分析されますか?

社長 犯人は誰か?と聞かれれば、ルービン元財務長官とグリーンスパン元FRB議長と答えます。犯人は何かと聞かれれば、ドル高と低金利政策による「マネーの急激な膨張」と答えます。

ヘッジファンドや投資銀行が犯人ではないのですか?

社長 主犯ではないと思います。よく言われる、人間の強欲も主犯ではないと思います。 ただし、犯人に殺意はなかったわけですから、殺人犯ではなく、過失致死罪です。しかも大きな歴史のうねりの真只中での出来事で、歴史に翻弄されてのものですから、情状酌量の余地があります。

歴史に翻弄された、とはどのようなことですか?

社長 数年間で急激にマネーが膨張したわけですが、数十年のタームで考えても、マネーは膨張してきています。その原因は二つあると思っています。
一つは冷戦の終結だと思いますので、「歴史に翻弄された」という表現が、出てくるわけです。冷戦の終結が社会主義国を資本主義世界に参加させました。具体的には中国が急速な工業化を達成して、世界の工場になってしまったことです。米国は中国から安い製品を旺盛な消費で買い捲り、その支払いのために、輪転機でドルを大量に印刷しました。これがマネーの膨張の歴史的意味です。
もう一つは「金融システムのIT化」です。IT化の進展により、膨大なマネーの処理、複雑な金融商品の処理が瞬時に、世界同時に処理できうるようになってきました。
ルービン元長官がドル高政策をとったのは、米国の製造業が中国に太刀打ちできない事が原因です。金融立国に舵を取らざるを得なかったわけです。

歴史は「石」で動いている、という「唯石論」に繋がるわけですか?

社長 その通りです。「金融のIT化」の根幹は集積回路の集積度の向上です。冷戦の終結も実はITが引き起こした事で、つまり「石」=集積回路が引き起こしたことなのです。本来の社会主義体制というのは、情報化に不適格な体制だからです。「情報化に乗り遅れ」が社会主義の敗北に繋がったと、思っています。

膨張するマネー

<歴史の潮流>

中国の成長は、どのように解釈されますか?

社長 中国は情報化社会に適応するよう、社会主義を変更したのです。政治は社会主義、経済は資本主義の政経分離を行った。それが意外にうまくいっているのです。中国で起こっている事は、工業化の高度成長です。中国を中核として、インドやアジア諸国等の新興国が高成長で工業化していくのは歴史の潮流です。

金融のIT化も歴史の潮流でしょうか?

社長 一度つまづいた金融は、失敗を反省して新たなIT化を進めると思います。百年に一度の危機は金融の終わりではなく、新たな金融のはじまりです。量を拡大するIT化から賢さを強化していくIT化に変化して、再登場するでしょう。 オバマ大統領は製造業の回帰を、政策に打ち出していますが、いきすぎた金融立国化を修正するという意味において、正解です。米国は農業、製造業、金融をミックスさせた成長戦略で国家を立てていけばよいのです。

その様な世界の潮流の中で、日本の針路はどうなりますか?

社長 日本は介護や福祉を含む、第三次産業を伸ばすでしょうが、金融は苦手ですから、欧米のように金融立国は無理です。農業立国も私は無理だと思います。やはり第二次産業をメイン産業とする必要があると思います。そのときに労働コストは新興国にかないませんから、先端技術を駆使した高度な工業化が日本の生きる道だと思います。日本の科学技術力から見て、さらに先端を走っていくことは十分可能だと思います。

新たな潮流・脱工業化

<技術革新の潮流>

今後成長が期待される先端技術はどのようなものがあるでしょうか?

社長 まず自動車でしょう。トヨタのハイブリッド車は2009年45万台以上を売り上げましたが、来年度は100万台を売り上げるとアナウンスしています。また外部充電できるプラグインハイブリッドのプリウスも来年度から一般販売するそうです。プラグインハイブリッド車(PHV)は電気自動車へのつなぎにほかなりません。PHV車のバッテリーを高容量化し、エンジンをはずせば、電気自動車になります。日産は今年電気自動車の「リーフ」を市場に投入します。

家電は新興国との競合が厳しい分野ですが、どうなるでしょう?

社長 今は稼ぎ頭が液晶から、ブルーレイディスクの録画機に移りつつありますが、さらに100万円もする、超高機能テレビ:東芝セルレグザや3Dテレビが市場に投入されてきています。稼いだら、旧製品の生産を新興国に移し、次の高機能製品を市場に投入していくという戦術でしょう。

その様な世界の潮流の中で、日本の針路はどうなりますか?

社長 日本は介護や福祉を含む、第三次産業を伸ばすでしょうが、金融は苦手ですから、欧米のように金融立国は無理です。農業立国も私は無理だと思います。やはり第二次産業をメイン産業とする必要があると思います。そのときに労働コストは新興国にかないませんから、先端技術を駆使した高度な工業化が日本の生きる道だと思います。日本の科学技術力から見て、さらに先端を走っていくことは十分可能だと思います。

超高機能家電
環境技術

<環境技術の潮流>

政府は環境分野で雇用創出140万人、市場創出50兆円超といっていますが?

社長 ドイツは20年間でCO2を22%減らし、雇用創出28万人、GDPで1.3倍成長を達成したと言われています。太陽光は期待されるエコな技術革新ですが、ドイツの企業が企画しているサハラプロジェクトは、遠大のもので、サハラ砂漠に鏡を敷き詰めて大電力を供給しようというものです。
太陽光・サハラプロジェクト

建設と運用コストから言って実現性はどうでしょうか?

社長 コスト面からいけば、原子力が圧倒的に有利です。日本はこの分野で圧倒的な競争力を持っています。日立、東芝、三菱重工ですね。米国や中国は二十年単位で、数百基の原子力発電所の建設計画を立てています。

様々な発電系統を通信網で結ぶスマートグリッドも実現すれば省エネに有効では?

社長 スマートグリッドは発電設備から末端の電力機器までを通信網で接続し、自動的に需給調節を行うものですが、電池のコストが安くなれば分散して電気を蓄えることで、システムが高度なものになります。太陽光発電や風力発電などの分散型発電を有効なものにすることができます。

スマートグリッド

産業分野のCO2排出は全体の34%で大きなものですが?

社長 その中でも、鉄鋼業は全体の15%ほどを占めている。日本の鉄鋼業は相当の努力を重ねていますが、更に技術革新は続いています。東京鐵鋼は最近トヨタの工場横に電気炉の製鉄工場を作り、トヨタの工場で出る銑鉄のくずを再生させています。この方法だと更にCO2の削減が1/5ほどに削減されます。

鉄道・新幹線・リニア

電車、新幹線やリニアーモーターでも日本は強い競争力を持っています。

社長 世界中で新幹線や新たな鉄道のプロジェクトが沢山計画されています。JR東海は2025年に東京―名古屋間をリニアーで、30分で走らせる計画です。米国のボルチモア-ワシントンDC間やチャタヌーガ-アトランタ(200km)をリニアーで走らせる受注を取るべく営業活動を展開しています。勿論、鉄道は排出ガスの極めて小さいEcoな輸送手段です。

昨年、社長が述べられていました「易は窮まれば変じ、変ずれば通じ、通ずれば久し」という「易経」と言葉のように、物事が詰まった後に、技術革新が生まれ、新たな潮流が流れ出している、という今日此の頃だと思います。ありがとうございました。

「易経」繁辞下伝