HOME > 社長室 > 東京京浜ロータリークラブ例会卓話「第8回木村準コンフィデンシャルレポート:続・北朝鮮クライシス」

東京京浜ロータリークラブ例会卓話

テーマ 「第8回木村準コンフィデンシャルレポート:続・北朝鮮クライシス」
日時 2007年04月17日
会場 高輪プリンスホテル


卓話の要約

<中国の豹変:警告無視に中国は怒った>

 北朝鮮の核実験後、中国は豹変した。国連決議に賛同し、主要銀行が一斉に北朝鮮への送金を停止、中朝国境のトラックの貨物検査を開始し、香港では実質的な臨検を実行した。実は中国はだいぶ以前に核実験の準備を察知していた。そして、9月から北朝鮮に対して、原油の供給を停止していた。これは、核実験準備に対する、北朝鮮への厳しい警告であった。その警告を無視して、核実験を強行したのだから、中国首脳部はカンカンに怒った。そして、10月18日唐国務委員は、ピョンヤンを訪問し、「二度目の核実験中止」と「六カ国協議復帰」を迫った。金正日はしぶしぶ受け入れたが、六カ国協議と同時に、米朝二国間協議の開催を提案した。

<中国強襲集団軍:ピョンヤン突入態勢に>

 中国軍はかなり早い段階で、中朝国境に大兵力を展開している。遼寧省の国境に第16軍、吉林省の国境に第46軍を配置し、さらに、完全に機械化された、強襲集団軍2個軍、10個師団、20万人を配置した。強襲集団軍を配置したという事は、単に難民流入対策での展開ではない。ピョンヤン突入の展開である。国境からピョンヤンまで、180km、東京―小田原間の距離、数時間で突入が可能な距離である。北朝鮮は油不足で軍は極度に弱体化し、しかも主力は38度線に張り付いているから、ろくに反撃できないだろう。唐国務委員は、原油の供給停止とピョンヤン突入体勢の軍を後ろ盾に、「二度目の核実験中止」と「六カ国協議復帰」を迫ったわけである。

<米国の豹変:全面譲歩>

 12/18)六カ国協議は一年一ヶ月ぶりに再開し、米朝は金融制裁で初めての二国間協議を行った。この六カ国協議は次回日程が決まらず休会したが、ドラマはその後に急展開を見せた。(1/16)米朝首席代表はベルリンで二国間会談を行った。17日会談を終えたヒル次官補と金桂冠次官は、双方うれしそうな顔つきであった。夜になると、北朝鮮は中華料理屋にヒル次官補を招き、酒を飲みながら、歓談した。この間、終始二人はご機嫌だった。(1/31)米朝金融協議の後、(2/9)六カ国協議が再開、(2/13)核施設閉鎖とエネルギー支援を盛り込んだ、共同文書を採択した。その後(3/5)米朝作業部会を経て、(3/18)六カ国協議が再度再開された。そして、(3/19)グレーザー米財務次官補は北京市内で、「凍結されている北朝鮮資金を全額解除」で、米朝が合意した、と発表した。これは米国にとっては全面譲歩の恰好だった。

<ベルリン密約:イラン核移転放棄>

 米国豹変のターニングポイントは明らかに、ベルリンの米朝首席代表会談であった。この会談では密約が成立したといわれている。六カ国協議の合意文書の内容以外に、「金融制裁の全面解除」と「テロ支援国家の指定解除」を米国が認め、見返りに、北朝鮮は「イランに核物質や大量破壊兵器を輸出しないこと」を約束した、と言われている。

<何故米国は豹変したのか?:中東に全力投球>

 中間選挙に敗れたブッシュは、残任期間を中東問題に全力投球することを決断した。イラク問題では、世論と野党の強い批判にもかかわらず、米軍増派の賭けに出た。イラン問題は緊迫の度を増し、開戦前夜の様相を呈している。イランの問題は核開発だけでなく、イラクへの武器流出が大きな問題となっている。ここで、北朝鮮からイランへ核物質や大量破壊兵器が輸出されれば、対イラン、イラク政策の根底が覆されることとなる。在任期間の残り少ない、ブッシュ政権にとって、北朝鮮問題をなんとか収めて、イラン-イラク問題に全力投球する必要があった。

<北朝鮮外交の行方:改革開放を視野に>

 全面譲歩を勝ち取った金正日は、核放棄を伸ばせるだけ、引き伸ばすことだろう。そして、核施設を放棄しても、出来上がった核兵器は確保し、核保有国の地位確立を目指すだろう。南北朝鮮関係、日朝関係を正常化すれば、経済の改革開放への道が開けてくる。・・・果たして、そのようにうまく事は進むだろうか?