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高岡アルミニウム懇話会10月例会講演会 ロボット開発最前線

(株)日本抵抗器製作所
代表取締役社長 木村 準氏
高岡アルミニウム懇話会10月例会講演会1


 本稿は10月例会を抄録したものである。(H14..10.25(金) 於高岡商工ビル)

<日本で話題のロボット>

 日本で21世紀に期待される産業はロボット産業である。自動車産業に匹敵するような可能性を秘めている。昨今のロボットブーム火をつけたのが、ホンダのASIMOである。1996年12月にASIMOの原型であるP2が発表され、2000年11月にASIMOが発表された。一方1999年6月にソニーのAIBOがインターネットで発売され、3000台を20分で売り切ってしまったというほどの人気である。この二つのロボットがブームの突破口になった。
 もともと人間の代わりに大変な労働をやるのがロボットだったが、人間型のASIMOも、必ずしも人間の労働をやるのではない。もう一つのAIBOはペット型ロボットである。ペット型ロボットのバージョン違いでは、エンターティメント型ロボットや医療目的の癒し型ロボットなど思いがけない方向に発展している。
ここ数年、技術系の学生や若い技術者にロボット研究を希望する人が多く、ロボット工学には非常に優秀な人材が集まってきている。外国ではこのような事は例がない。ロボットは日本がリードできる産業であると経済産業省も研究開発の助成に力を注いでいる。 ここにいくつかのロボットを紹介する。

<P2 ASIMO>

 P2はホンダが1996年に発表したASIMOの原型である。これが二足歩行で歩いてくる姿は、衝撃的であった。技術者にとっても二足歩行は何とかすればできるだろうと思っていたが、実際に歩いてくると非常にインパクトがある。2000年11月にスマートになったASIMOが発表された。今年3月の発表会では、一般の人が20分の練習でコントローラーを使って動かせるようになった。

<AIBO>

 ペット型ロボットAIBOの一世代目は犬である。センサーがついていろいろな反応をする。最新のものは高級バージョンで18万円する。

<SDR-4X>

 11~12月頃に発売予定のロボットSDR-4Xは、イベント用で大変高価である。独自のモーターで、その中にマイクロチップが入っている。人間を認識して挨拶をしたり、歌を歌ったりする。これからSDRは話題になるだろう。

<ヘビ型ロボット、ローラーウォーカー>

 東京工業大学の広瀬教授は目的に応じた形のロボットを研究している。例えば地震がおきた時には、ヘビ型ロボットでいろいろなところに入っていける。ローラーウォーカーは平地でも段差のあるところでも歩き、下が車輪になっているのでどの方向でも移動できるというものである。

<地雷探査ロボット>

 千葉大学が研究している地雷探査ロボットは、衛星により位置を測ることができ、情報を送り地雷マップを作る事ができる。アフガニスタンなどへの援助の一つとして、これから日本が力を入れるべきロボットであろう。

<顔ロボット、人間型フルート演奏ロボット>

 あくまで人間の形にこだわっているのが早稲田大学で、顔ロボットはセンサーによって痛い、痒いなどを顔で表情をつくり、お酒を近づけると酔っ払う。人間型フルート演奏ロボットは肺や喉や唇を機械におき変えて吹くことになっている。フルートによって吹き方が違うが、フルートを変えても人間と同じようにコンピュータで計算してアジャストしてしまう。

<POSY>

 POSYは人間以上に人間の感覚に訴えることをねらっているロボットである。腕を挙げたり下げたりするだけだが、部屋の中やショーウインドーに置いてもよい。結婚式で花嫁花婿に花束を送る少女をイメージしている。

<最も癒し効果があるロボット>

 メンタルコミットロボット「PARO」は、タテゴトアザラシの赤ちゃんをイメージしている。特になでられることに対するセンサーをふんだんに使ってある。構造的には鼻に光センサーがあり、頭部にあるマイクで相手の声を取る仕組みになっている。後はほとんど触覚センサーで、ひげ一本一本に触覚センサーがついている。頭部、背中、腹部、尻尾の平面に触覚センサーが入っていて、どのようななで方か、その違いを、センサーとコンピュータが判断する。PAROは医療福祉の分野(セラピー)を目的としたロボットである。
 メンタルコミットロボットの研究は、産業技術総合研究所の柴田主任研究員が、1990年から調査を始めて10年がかりで研究している。PAROの開発は 97年から始めて、99年に紅白歌合戦に出た。00年に沖縄サミットのお土産に各国の首相の名前に反応する仕組みになるよう依頼されたが、PAROをお気に入りだった小渕首相が急逝され、プロジェクトは中止となった。その後01年にギネス認定、来年に量産することになった。
 ところで、アメリカでは全世帯の58%が動物を保有し、ペット産業は2兆円産業であるといわれている。日本では1.2兆円である。産業用ロボットが 5000億円産業であるから、ペット産業の方が大きいことになる。動物で癒すこと(アニマル・アシステッド・セラピー)は昔から行われているが、リハビリ訓練や精神病患者の治療に使ったり、ペットに触れさせることで患者の健康状態をよくしたりする。これにより社会的促進(会話の促進)、精神的促進(ストレスの緩衛作用)、生理的促進(収縮期血圧、血清中性脂肪値の改善)の3つの効果がある。ところが、実際の動物だとアレルギーや感染症が心配され、病院では使えない。そこをロボットでやろうというのが発想である。
 イギリスの知的障害・自閉症の子供の病院では、ロボットが患者に良い影響を与えることができたと報告されている。日本では筑波大学付属病院小児科病棟やデイサービスセンターで臨床されている。一日3回「PARO」とふれあうことで、自閉症の子供が明るくなり、ロボットに話しかけることで人とも話すことができるようになった。また、入院生活でストレスがたまっている患者の心を癒すこともできる。
 今年の3月、イギリス科学博物館でPAROの展示を行ったところ、ものすごい反響があった。イギリスのマスコミやテレビにも取り上げられ、それを見たギネスの方が会場を訪れた。PAROのデータや論文を提出したら、「最も癒し効果があるロボット」としてギネスに認定された。これから量産することになるが、あくまでも介護用なので販売方法が一つの課題になると思われる。製品については、もっと抱きごごちをよくし、徹底的な癒し効果をねらうことやセンサーを使って患者の様子を携帯で見ることもできないかと考えている。メンタルコミットロボットには、まだまだ多くの可能性がある。
 最後に、我々の世代に多くの影響を与えた「鉄腕アトム」の作者 手塚治氏の言葉でつたない講演を締めくくりたい。「21世紀の前半には必ずやロボットと共存せねばならない社会状況に直面する。人間の脳細胞は140億以上あるといわれるが、たとえ140億の集積回路を持った高度なロボットが生み出されたとしても、それはあくまでも擬似人間であって人間ではない。しかもそれらの擬似人間は神の手ではなく、人間の技術によって作られたことが問題なのである。なぜなら、それらをつくりあげ操作する人間側に100%の保証がないからである」

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