HOME > 社長室 > 東京京浜ロータリークラブ例会卓話「第21回木村準コンフィデンシャルレポート:エクサスケールの衝撃」

東京京浜ロータリークラブ例会卓話

テーマ 「第21回 木村準コンフィデンシャルレポート:
 エクサスケールの衝撃」
日 時 2016年02月16日
会 場 ザ・プリンスさくらタワー東京


卓話の要約

<スーパーコンピュータが生み出す技術革新>

 私の参加する勉強会で、先日話題になったのは「将来のスーパーコンピュータが軍事にどのような影響を与えるか」という事でした。 スーパーコンピュータの進化は核技術、サイバー戦争、軍事ロボット、高精度ミサイルや暗号解読等の軍事技術に大きな影響を与えます。 さらに軍事以外でも食料問題、エネルギー、気象、地震予知、医療や薬品等の分野で飛躍的な革新を生み出します。

<次世代スパコン>

 一昨年日本が「2020年までにスパコン京の性能を100倍(100京FLOPS/秒)にする」という計画を発表すると、 それに刺激され米国は昨年、世界最速のスパコン開発に向けた「国家戦略コンピューティング・イニシアティブ」を定めた大統領令に署名しました。 開発目標はエクサ級スパコンで、1エクサFLOPS/秒、つまり100京回の計算のできるスパコンです。日米に刺激され中国、EUもエクサスケールの開発を発表しています。

<スパコンの性能>

 スパコンの性能を表す指標の一つがFLOPS/秒です。
浮動小数点数演算を1秒間に何回できるかという能力を表した値です。 現在最速の天河2号は33.86ペタFLOPS/秒です。1ペタは1000テラ(10の15乗)です。 1エクサは1000ペタで(10の18乗)ですが、1京は10ペタですので、1エクサは100京となります。 日本のスパコン「京」は1.051京FLOPS/秒で10.51ペタFLOPS/秒です。

<TOP500>

 TOP500とはFLOPS/秒で競ったランキングです。
昨年11月のランキングが最新ですが、No.1は33.86ペタFLOPSを記録した中国の天河2号で、六連覇しています。 2位は米オークリッジ国立研究所のタイタンで、17.59ペタFLOPS/秒です。 3位は米ローレンスリバモア国立研究所のセコイアで、16.32ペタFLOPS/秒です。日本の「京」は6位で10.51ペタFLOPS/秒でした。

<Graph500>

 Graph500は、グラフ構造の幅優先探索処理の性能としてのTEPSを指標に用います。 ビッグデータの活用が重要視される大規模データ処理の性能指標として注目が高まっています。 このランキングでは、日本の「京」は2期連続世界一位を獲得しています。 2位は米国立ローレンス・リバモア研究所のセコイア、3位に米アルゴンス研究所のミラで、中国の天河2号は6位に留まっています。

<Green500>

 Green500は最もエネルギー消費効率の良いスパコンをランク付けしています。
指標は消費電力当たりのFLOPS(FLOPS/W)を使っています。 昨年6月、日本のExaScaler社のシステムが1位から3位を独占することとなり世界を驚愕させました。 昨年11月もExaScaler社の菖蒲が首位で、2位に東工大TSUBAME-KFCがはいりました。

<スパコンの消費電力>

 スパコン「京」は3万世帯分1万2660kwの電力を消費し、そのコストは年間21億6千万円かかります。 エクサスケールのスパコンを作るため、仮に今の京を100台並べたとしますと、300万世帯分126万6千kwの電力が必要で、 これは原発1基分の電力に相当します。コストは年間2160億円です。 従っていかに消費電力を落とすかが、エクサスケールのスパコン開発の最大の課題となります。

<菖蒲>

 Green500で首位を占めるExaScaler社製のスパコン菖蒲は7.03ギガFLOPS/wの消費効率を達成していますが、 これはスパコン京の8.4倍の効率です。高効率達成の決め手の一つは水冷式を採用したことです。 回路は電源も含めてフッ化炭素の絶縁性の液体に浸されています。 もう一つの決め手はシリコン基板にCPUを1,024コアも搭載したモンスタープロセッサーを使用したことです。 PEZY-SCと呼ばれるこのモンスタープロセッサーはExaScaler社と同じ企業グループの株式会社PEZYコンピューティングが開発したもので、 この会社は日本のベンチャー企業です。ちなみに現在最高性能の商用プロセッサーはインテルのゼノンと呼ばれるプロセッサーでコア数は18個です。